【視覚器】眼球 視細胞 水晶体 硝子体 涙器 眼筋 マリオット盲点
視覚器は光を感受する装置です。眼球と眼筋、眼瞼、結膜、涙器などの複眼器からなっています。
眼球
眼球は眼窩内にあります。
直径約24mm、重さ6〜8gでほぼ球状を呈しています。
前方は眼瞼によって防御されています。
眼球の後ろには脂肪組織(眼窩脂肪体)があります。
眼球が前から外力を受けても直接後ろの骨部にダメージがないようにクッションのような保護作用をしています。
全身の栄養状態が悪くなって脂肪が減少しますとこの部分の脂肪も減って眼が窪んだ状態になります。
眼球の壁は三層の膜
(外側から眼球繊維膜・眼球血管膜・眼球内膜)
から構成されています。内部に水晶体・硝子体・眼房水を入れています。
(1)眼球繊維膜
強膜と角膜から構成されます。
強膜
強膜は、眼球の後ろ5/6を包む滑らかで強靭な結合組織性の膜です。
強膜には血管が少ないため、白色です。この膜によって眼球の形が保たれています。
皆さんが白目といっていますのは強膜の前方部がその上を覆う眼球結膜を通して見えているものです。
強膜の後方は視神経と血管によって貫かれています。
角膜と強膜との境目には
シュレム管(強膜静脈洞)
が環状に分布していて眼房水の吸収にあたっています。
角膜
角膜は眼球の前方・中央部にある無色透明な膜です。
眼球の前1/6を包んでいます。
角膜は全体として少し前方に突出しています。
角膜の表層は、結膜から続く重層扁平上皮で覆われていますが、角膜の厚み(約1㎜)の大部分を占めますのは強膜から続く繊維性の膜(角膜固有質)です。
血管はありませんが神経が分布していますので角膜反射があります。
また異物が入ると強い痛み訴えがあります。
皆さんががふつう黒目といっていますのは透明な角膜を通し虹彩と瞳孔が見えているものです。
眼球血管膜
眼球血管膜は血管と色素に富む層です。
脈絡膜・毛様体・虹彩の三つからなります。
眼球結膜は臨床上、ブドウ膜とも呼ばれます。
(1)脈絡膜 脈絡膜は、血管と色素細胞(メラニン)に富んだ暗褐色の膜です。
強膜の内面にあります。
また脈絡膜は網膜の外層に位置して網膜外層の栄養をつかさどっています。
このほか眼球内部を暗室にする重要な働きもあります。
(2)毛様体
毛様体は脈絡膜の前に続く肥厚した部分で全体として輪状の部分です。
後面からみると放線状に毛を並べたように見えるので毛様体とネーミングされました。
毛様体は水晶体の周囲にあります。
内部の平滑筋性の毛様体筋と毛様体の内側縁から出て水晶体の外側縁につく繊維性の毛様体小体(チン小体)によって、水晶体の弯曲を調整します。
(3)虹彩
虹彩はカメラの絞りに相当するものです。
毛様体から起こり水晶体の前方に位置する輪状の色素膜です。
虹彩の中央部の小孔を瞳孔といいます。
虹彩は血管・神経・色素に富み、その内部には二種類の平滑筋〜瞳孔括約筋、瞳孔散大筋があります。
瞳孔括約筋は縮瞳させる平滑筋で瞳孔の周囲を輪状に走っています。瞳孔散大筋は散瞳させる平滑筋で虹彩の縁から毛様体に向かって放射状に走っています。
瞳孔の直径は3〜6㎜であり調節の状態により刻々と変化します。虹彩は角膜と水晶体の腔所を二分しています。前方を前眼房、後方のものを後眼房といいます。それぞれ眼房水を入れています。
眼球内膜
眼球壁の最内層をなすもので網膜と呼ばれます。
網膜は後半部の光を感じる網膜視部と前半部の光を感じない網膜盲部に分けられます。
(1)網膜視部
外側より順に色素上皮、視細胞層、脳層(内顆粒層、神経節細胞層)があります。視細胞層は光受容体であるばかりでなく、視覚伝導路の第一神経元(げん)でもあります。視覚情報のおもな経路は視細胞層の視細胞⇨脳層(内顆粒層)の双極細胞⇨神経節細胞層の神経節細胞です。神経節細胞は、軸索を伸ばし脳に視覚情報を伝達します。
①視神経円板(視神経乳頭)
神経細胞の軸索は、視神経繊維となって網膜の最内層をはしります。
これらは集まって、眼球後部の乳頭部を視神経円板(視神経乳頭)といい、眼球の後極からやや内側(鼻側)に位置しています。
視神経円板部には、視細胞がなく神経繊維のみで構成されているために光を感じません。この部分がマリオットも盲点に相当します。
②黄斑
視神経円板の約4㎜外側の網膜面には、黄色の丸い部分(直径0.3㎜)があります。それを黄斑と呼びます。黄斑部はくぼみになっており中央を中心窩といいます。黄斑に分布する視細胞の大部分は錘状体で、状体はほとんどなく錐状体のみです。
このために黄斑(特に中心窩)は注視と明視の中心をなし物体はここに結像したとき最も鮮明に見えます。
錘状体と杆状体
視細胞層にある視細胞は、その突起の形から錘状体と杆状体の二種類に分類されます。
錘状体は強い光と色調を感じます、中心窩に最も多く、周辺部に向かってしだいに少なくなります。
杆状体は弱い光を感じるが色調は感じません。周辺部に多く存在します。黄斑部にはほとんどありません。
網膜盲部
網膜の前半部で二層の立方上皮からなります。毛様体・虹彩の内面を覆っています。光を感じません。
水晶体
水晶体は虹彩の後方、硝子体の直前にある小さい両凸レンズ状の硬い構造物です。その直径は約1㎝です。水晶体の周辺からは、
毛様体小体(チン小体)という細い繊維っが出て毛様体突起についています。水晶体はこの繊維で固定されています。
硝子体
硝子体は水晶体と網膜の間にある無色透明のゼリー様の物質です。
眼球の後ろ3/5を占めます。これは眼球の内圧を保ち、眼球に一定の形を与えるものです。その90%は水分です。
眼房水
眼房水は眼内組織(水晶体、硝子体、角膜など)の栄養液として毛様体内面の上皮から分泌されて後眼房から虹彩を経て前眼房へと流れます。
角膜と強膜の境界部にある
シュレム管(強膜静脈洞)へ吸収されます。
眼房水の生産過剰やシュレム管から排導障害は眼房内圧を亢進させて緑内障をきたします。
副眼器(眼球の付属器)
眼瞼および結膜
眼瞼は眼球の前面を閉ざす上下二枚の筋性繊維膜です。
眼球の保護と光の遮蔽(しゃへい)を行っています。
上下両眼瞼の間に眼瞼裂を形成します。
眼瞼の外側は皮膚で内面は結膜で覆われています。
眼球結膜は眼球前面の強膜を覆うものです。
この部の結膜は透明なため、その下の強膜が透けて見えます。
眼球結膜の周辺部はゆるんでいて眼球は自由に動きます。
中央部は角膜上皮に移行します。眼瞼結膜は眼瞼の内面を覆うもので、血管に富み赤みを帯びています。
このためにこの部分の結膜は貧血の検査に利用されます。
眼球結膜と眼瞼結膜の移行部は結膜円蓋といい〜上結膜蓋には涙腺の道管が開いています。
眼瞼の内部には眼輪筋や硬い結合組織性の瞼板あります。
眼瞼の縁には睫毛(まつ毛)が生え、また眼瞼には脂腺の一種である
マイボーム腺が開口します。
この腺からは脂肪性んおなめらかな液を分泌します。
眼瞼の皮下は組織がまばらであるために浮腫(むくみ)が生じやすいです。
涙器
涙器は涙腺と涙の通路からなります。
涙腺は眼窩上壁の前外側部にある小指頭大の漿液腺です。
涙腺から分泌された涙は、眼球前面をうるおして角膜が乾燥するのを防ぎ、まばたきによって内眼角の涙湖に集まりここから上下の眼瞼縁内側端にある涙点に注ぎさらに涙小管を通り眼窩内側壁にある涙嚢に集まり下方の鼻涙管を通して下鼻道の全部で鼻腔に排出されます。